最近ござさんの配信を聴きに行くと、この画面が出迎えてくれる。
暗い紺色の背景のなか、透き通った碧色の羽を持った蝶が飛び交う幻想的なシーン。不思議な白いキノコに焦点が当てられ、その中をヒカリゴケみたいに地面が静かに青く明滅する。
( この待機画面の初出は2020年の第一回ねぴらぼ後の納涼コンサート配信)
くつろげる空間
平日の仕事で疲れた時でも、土日の休日でも。
疲れてても落ち込んでても。
優しく深い青い色を目にすると、気持ちが落ち着く。
背景に微かに流れているのは「大きな古時計」のござさんアレンジ。
BGMを聴きながら、音もなく光る青い地面を見つめてじっと配信が始まるのを待っている。
世の中生きてるといいことばかりじゃなくて、悲しいこととか分かり合えないこととかが大部分を占めるんだけど、そんな荒んだ日常の終わりにそっと暖かい案内の灯りをともしてくれる場所。
ござさんの配信はまずMC無し、演奏からで幕を開ける。
繊細で美しい音色と抒情的に仕上げられたフレーズ。
そこに盛り込まれた、ござさんなりの溢れんばかりのホスピタリティ。
このオープニングの2曲ほどの演奏が無言のうちに語りかけてくるようだ。
「今日もみなさまお疲れ様です。ピアノの演奏で少しでもお寛ぎいただければ幸いです。」
とでも言うように。
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ござさんの配信運営は(というか動画もだが)、徹頭徹尾リスナーありきである。
リクエストを丁寧に拾うござさん。
ど〜〜しよっかな〜〜〜
と言いながらも、弾く曲もジャンルも見事に平均して重ならない。もしジャンルがかぶったら、選曲を綺麗に前回から外してくる。
前に何弾いたか全然覚えてないですねえ〜〜〜
とシラを切りつつ、毎回のテーマとかも勘案して冷徹にリクエストを取捨選択していると思う。そう、あくまでリクの拾い方が平等になるように、だ。
季節感も散りばめながら毎回丁寧に配信の計画は練られているに違いない。
季節のモチーフ
夏の夜はまだ宵ながら あけぬるを 雲のいづこに月やどるらむ
(清原深養父 古今和歌集 夏)
たなばた(の日を少し過ぎていたけど)だからといって冒頭で吹奏楽版を弾いてくれた。
最初の打ち上げ花火を模したスネアの一撃は流麗なアルペジオに変えて。
原曲は酒井格が高校生時代に作曲したもので、明快でわかりやすいリズムとメロディ、和音も素直な印象でこのままコンクールの課題曲って言っても違和感ない。中学生の演奏でもすごい映える。
ござさんがこの長い曲をここまで完コピしてるのは絶対現役時代に演奏してたからだと思う。冒頭のテーマ提示部の真っ直ぐな疾走感。SAXが奏でる織姫とEuphの彦星の、切なくロマンティックな掛け合い。展開部から終末にかけて一気に畳み掛ける所で左手に16ビートを仕込んで盛り上がってキメる。
手が足りないと言いながらまさに完コピ、思い入れが半端ないでしょ。
季節感に則れば毎年弾いてくれる可能性が高い。1年に1回と思うと中間部の切ないところも別の響きを持って聞こえてくる。
この曲つながりなのか、最後のノーストップメドレーにも吹奏楽関連のレパートリーが多かったのは気のせいか。ロッキーからエルクンバンチェロと007(どれも恐ろしい再現度、聴いててゾーってなる)ってそのまま定期演奏会のプログラム??それか、野球応援の季節だからかなあ?
今回の季節感のテーマはたなばたと星だったのかもしれない(途中から逸脱してるけど)。
モーツァルトの原曲を踏襲しながらも史上最高にキラキラしてるきらきら星変奏曲(Youtubeの動画タイトルみたいだな)。さらに見上げてごらん夜の星を、でキラキラ度爆上げである。
ござさんがピアノを弾くたびに、その音のしずくはカゴに入れられて夜空にふり撒かれていく。そうして夜が更けるにつれ、見上げると静かにまたたく星々で暗い空は埋め尽くされる。
曇ってる日に聞いても、目を瞑ると眼前には満点の星空に輝く大小の星が広がるのだ。
そしてござさんの16ビートを刻む左手に誘(いざな)われ、銀河鉄道999から君の知らない物語、さらに木星から天体観測、星間飛行と宇宙空間の旅に飛び出していくござさん。
ウソですちょっと盛りました。
でも今回どれも左手のビートがキレキレで、その勢いだけで自分も気がついたらこれ書いてるといっても過言ではない。視聴者のニーズに寄り添ってくれているけど、やっぱりこういうござさんの思い入れがあるであろう曲をやってる時が文句なしに生き生きしてるんだよね。弾いてる姿も聴こえてくる音も。
原曲にもアレンジ楽譜の五線譜にも書けないこぶしのようなものが効いている。(?)
そして「星に願いを」から垣間見える、降るような星空。
ここで目くるめく銀河への旅に終止符が打たれたのであった。
驚愕のJAZZアレンジ
繰り返すけど、毎回言うけど、自分はJAZZのことは何も知らない。イメージは「バーとかカフェとかでBGMにかかってそう」だったし。(そこで水戸黄門弾いてる人がいるのも知らなかった)
吹部だった時にそのジャンルの存在を知ったけど、部活では当時管弦楽曲のアレンジが流行ってたので「JAZZって難しそう」ってなって避けて通った。あの時そっちを聞いてればなあ、絶対今の音楽の嗜好も変わってたに違いない。
とにかくまともにJAZZのことを知ったのはござさんの配信からだったので、それからピアノの練習もちょっとしながら必死に調べた。しかし、和音がⅡ - Ⅴ - Ⅰ の展開となるとか、アルペジオも独特、とか演奏のメインはアドリブで奏者によって違うとか、楽譜もコード進行以外の決まったものはないとか、swing– jazzの一種がビッグバンドだとか、
そんだけかい!………結局ちっとも分かってないじゃないかぁ!
頭で考えてもしょうがないので、実際にJAZZの演奏をYoutubeで聴きまくることにした。ござさんのチャンネルにもJAZZの再生リストがある。
これ聞いて覚えろってことですね!?(ちっとも頭に入らないけど)
聴いてる分にはござさんのJAZZは、以前配信でも言われてたように「ハスキーな外国人のJAZZシンガーが哀愁漂わせて」(だったっけ)歌ってるところを想像しながらやってるらしい。そう思うとsummer timeのアドリブなんかまさにそれである。
というかやっぱコードをいちいち考えてるよりも、主にコードを押さえてる左手は自動的に動いて演奏してるから、脳内の思考はマルチタスクになってるというんじゃ無いらしい。しかし覚えてるJAZZ–standardが確実に減ってるらしいから、ござさんのレパートリーの根幹を成すジャンルとして、その天然記念物レベルの希少な曲の数々の保存に努めていただきたいところである。
………ん???
………自動的に左手が動いてるってどういうことですかぁぁ!!
まじめにJAZZについて覚えようって悩んでたのに……なんか疲れたな…アイス食べよっと。
でもsummer timeから後が文字通り圧巻であった。理論的に説明できませんけど。原曲からさらに高速になって突っ走るウォーキングベース、見てても目にも止まらないアドリブ、……
何よりも上記のJAZZ動画リストにある代表的演奏というかトップ奏者たちの人生の年輪を重ねてきているであろう味わい深い音色に、ござさんのピアノは肉薄してると思うのだけど気のせいか。
しかしやっぱりJAZZの練習は実践してこそらしいので、また配信で JAZZっぽいじゃなくて思う存分やりたい放題 本格的アドリブ満載の演奏もやってもらいたいところだ。
ちなみにセット売り商法はござさんの場合、理にかなってると思います。
メドレーで繋ぎも含めて考えてるござさんは、ノーストップでやる方が調子が出るだろうから(?)、1曲ずつリクエストを拾わなくていいのは助かるのでは。
このチャット見ながら次のテーマを考えてる間のつなぎがすでにお洒落だし。
なんであの繋ぎをいちいちノールックでチャット見ながら弾けるのか。謎。
うん、これで言いたいことは大体言った。
個人的に言えば季節を感じる曲で夏といっても、中々サザンの曲は拾われなかったので、今回のメドレーは貴重だ。勝手にシンドバットとか、夏通り越してラテンのアツいリズムになってる。もっと個人的には?夏といえばTUBEですがそっちはさらにマニアックですしね…
巧妙な罠に果たして抗えるのか
ノリノリで生き生きしてるござさんといえば、最後のアニソンからノーストップメドレーにかけてだろう。
ここでもあくまでリクエストに平等であろうとするござさんは、あらゆる年代の曲を拾おうと余念がないようだが、母をたずねて三千里とハイジがアニメもテーマ曲も名作なのは論を俟たないとして、シレッと最後にマッハGoGoGoを入れてくるので全く油断できない。
え?でも自分この曲、サビを歌えるのはなぜだ世代じゃないのに?
ござさんはこういうネタは全部ニコニコ動画で仕入れてるのは疑いがないが、自分は絶対知らないぞ、何でだろwww
そんなどうでもいい疑問は置いといて、さらにイントロクイズを始めるござさん。めっちゃ嬉しそうなのが隠しきれてません。
なぜかござさんと同世代よりも結構上の人たちが配信見てるのを、イントロクイズというレクリエーション的なキャッチコピーで誘い出そうとしてるだけなのです。
決してその罠にはまってはならない。
と言いながらそのあまりのリズムのリアルさにまんまとチャットに書き込んでたのは、はい自分ですwwwwだって思わず脊髄反射してしまうんだよね!??再現度半端なくない??
さんさんさん♪♪さわやか3組〜〜とか?反則だよね…なんでござさん知ってるんだ?あ、ニコニコ動画か…
ノーストップメドレーになってからだけどこの曲もアニソンだ。
どうでもいいけどござさんの配信でも時たま?登場してたかもしれないこの曲、幽遊白書のOpだって今回初めて気がついた。
今かい!!!?
いや、有名曲やろ?って感じだけど、あんなにアニメも見てたはずだけど……あまりにもリアルタイム世代すぎて、自分の中の90年代DNA(何だそりゃ)がござさんの演奏のおしゃれさに「なんか違う」ってダメ出しをしてた可能性が微レ存。
幽遊白書OP「微笑みの爆弾」を勢いで弾いてみました pic.twitter.com/Wd9nyXCMur
— ござ 🎹 (@gprza) 2016年9月7日
キレキレのリズム、おしゃれな演奏、なのに半ズボンのアロハみたいな服……?て言う意味でも自分の脳内がバグってたのはあるけど。
ほら、90年代ってさあ、こんな感じなんだよね…??
例:不思議の海のナディア ED Yes,I will... - YouTube
( 〃 フルバージョン)Yes I will - Nadia and the Secret Blue Water - ending full version - YouTube
あ………アニソンといえばこれも今回弾いてくださってました…貼っとこう。
まもって守護月天!OP 「さぁ」を弾いてみました pic.twitter.com/iPQS63nDd4
— ござ 🎹 (@gprza) 2017年1月2日
今回も1番ござさんが生き生きしてたのは最後のメドレー。
10−4とかチャルダーシュとか月光はガチのクラシックだった。それは置いといて配信開始2時間を超えるあたりから別のスイッチ入ってたとしか思えない。
メルトとコネクトまでは、ござさんのレパートリーでおなじみなのはわかってる、その次のだんご大家族って?って原曲聴いたら癒し系なんだけど壮大なだんご物語みたいになっとる。
それから気がついたらなんでもJAZZふうになってて開いた口が塞がらない。
突然変わる曲調についていくので精一杯、なんで即興でできるのか、それは宇宙の真理。永遠に解明されない謎。
ござさんがござさんである所以
いつ聴いても、
どの曲を聴いても、
はっとさせられる斬新さと、
説得力があって心に刺さる響き、
誰にでも愛される明るい曲調とえもいわれぬ美しい音色。
これらの独創的なござさんの世界に彩られて、毎回おなじみの曲も知らなかった曲も知らぬ間に惹きつけられる不思議な表情をもち、それでいて初めて出会うような初々しい印象があって聴いていていつもはっとさせられる。
どの時代の曲も生まれ変わったかのように、
新しい命を吹き込まれたかのように音が歌う。
リズムが身を翻して奔る。
生配信でいつものござさんに会えるのは、その源はやはり生配信を通じての即興を継続しているからに他ならないだろう。その繰り返しだ。
生配信はござさんの生命の源。
リクエストはそのまま血となり肉となる。