新月に近い秋の夜。
墨を流したような漆黒の闇。
遠くで聞こえる虫の声は、琴線をはじくように清らかだ。
ヘッドホンから流れてくる、清冽なピアノの調べ。
静かな水紋の輪を描くように、音は空間にそっと溶けて広がっていく。
毎週の配信コンサートはこうして幕を上げた。
ピアノ配信 リクエスト募集中 2022/09/24 - YouTube
澄み切った風が部屋に舞い込む。
ピアノ一本での表現にも、ござさんはちょっとした四季の移ろいを忍ばせてくる。
秋を題材にJAZZの物悲しい音とリズムに乗せて、童謡からStandardJAZZまでが物憂く侘びしい曲調でまとめられていた。
時折、ハイペースなウォーキングベースや、虫の音がリズミカルに混ぜられて、聴いていて沈みがちだった気持ちがちょっと上を向く。
秋萩のふるえにさける花見れば 本の心は忘れざりけり
現代語訳:
萩の古い枝に咲いている花を見ると、あなたへの真心は昔と変わらないことに気づく
ござさんの生配信は、リスナーの要望に沿って、あらゆる年代やジャンルに渡ってリクエスト曲を弾いてくれるところが楽しい。ただチャット欄に流れるリクエストも膨大な量なのでどれが弾かれるかは宝くじみたいな確率になっている。
自分はござさんのレパートリーの範囲の曲をほぼ知らないので、チャット欄に流れる往年の名曲や珍しい曲を見てるだけでも楽しい気分だ。
レパートリーの曲は流行りの曲ばかりという訳ではないが。ござさんの選ぶ曲にはそれぞれ独自のこだわりが見えると思う。知ってる曲も、知らなかった曲も、ござさんが弾いてくれると原曲を彷彿とさせるというかさらに曲のいいところを発掘されてる気がして、メドレーの構成の妙も加わって自分はただ聞き入るばかりだ。
ジブリメドレーも頻繁に弾かれてると思うが今回も新たな世界観が見えた気がして素晴らしい。
しかしござさんの独特の世界観が炸裂したのは今回でいえばクラシックとJ-POPでは?
ござさんの生配信て、遊園地のアトラクションなんだよね。
しかもシークレットアトラクションって感じ。
ふつうは何に乗るか予めわかってるし、スリルとかワクワク感を楽しむものですが。
ござさんの配信はなんていうか…目隠しされて直前に何に乗るか知らされる。絶叫系からファンタジー系まで、息つく暇のないスリルと感動が襲ってくるなか、意表を突かれてええっ?と足を踏み外しそうになる。
クラシックの曲はこうだったなとリズムに乗ろうとして、J-POPの曲はこんな感じで思い出がよみがえり……ってしみじみと感傷に浸ろうとしたところで。
すごい速さで180度逆方向へ持っていかれて、よく言えば目が回る、悪く言えば気を失う。ござさんの仕掛けた謎のばねに翻弄されて、その掌中でいいように転がされているというか。
でも包括的に振り返ると秋のメドレーとして不思議にまとまっている感もある(そうか?)のが不思議なところ。
秋の夜長の作業のBGMとしてもぴったりな哀愁をおびた音色。
しかしござさんにはここからが本番だ。
「宴もたけなわではございますが…」(今回は言ってないな)という時間帯になってからがござさんのお楽しみタイム。
最後のノーストップメドレーを欠かさないのは、いろんなアレンジで「どうかな、今日もリクエストに応えられたかな」と、今度はござさんが自由に選曲とかアレンジを楽しむコーナーだから。
毎週配信を欠かさないというかコンサート本番前ぎりぎりの時期まで生配信を絶対に欠かさないのは、(配信全体に言えることだとしても)即興で縦横無尽に弾きまくることがござさんのHPの源だからだと思う。
いつも思う。
この最後のメドレーコーナーが、ござさんが一番生き生きしてる。手が疲れようが体力がなくなろうが、ネジが壊れたというかタガが外れたというか高速道路をスピードMAXで飛ばしているような勢いが、聴いてても楽しいんだ。
いつも電池切れるまでこのように弾いてるのだと思うが、今回は22時開始と時間が遅いにも関わらず夕食はまだのようだった。確かに。ピアノはスポーツだし、スポーツ選手は試合の直前だとせいぜい件のウィダーとかバナナなど、消化がよくてすぐエネルギー変換するものしか食べないと思う。ござさんの生配信も2時間集中力を維持しようと思ったらそれ以外は食べられないだろう。
そうじゃなくて、なんで配信時間遅かったんでしょうね?昼間に何か仕事とか打合せとかリハーサルとかあったんでしょうか。
最近執筆されているらしい、1日あたり5000字がノルマの仕事に絡んでるのだろうか。
告知が待ち遠しいな。