ござさんの魅力を語る部屋

ピアニストござさんについて、熱く語ります

ござ式の正体とその衝撃

 

とある日のござさんのつぶやき。

 

自分は辺境のうどん県在住なので、この栄えある光景にはお目にかかれていない。

ただ、この本が出版されたということについて書いてみたい。

 

※資料コーナー


 

本というメディアは、デジタル化が進んだ昨今kindle版が席巻しているように見えながら、一日当たりの出版数が200冊とか一年につき7万冊とかいう数字が飛び交う。それらが扱う話題、いわゆるトレンドワードの遷り変りの目まぐるしさはデジタルデータの機動性に勝るとも劣らない。しかも日本という小さな島国で出版される紙メディアは、世界全体で言えばほんの米粒ほどに過ぎないこともつけ加えておく。

 

ただし。瞬間風速を更新しながら刻一刻と様相を変えていく世論とは、紙媒体というアナログな流通形態は完全に一線を画しているという一面も併せ持つ。

放物線がゆっくりとした周期で弧を描くように、ある一点で収束しつつも紙の本それぞれが持つ世界観は時代と共に新たにうねり動いていくから。

 

(画像リンク:定常波 - Wikipedia )

 

森林がその地中に豊富な水資源を湛えているように………本には人類の叡智が古代から連綿と受け継がれている。我々は自らに課せられた命題の真偽を求め、茫漠として果てしない宇宙の中を渉猟して永遠に彷徨う。

 

 

 

目次:クリックで各項目へ飛べます

 

 

 

さて、楽譜においてはデジタル版が一般化し普及していると言っていいだろう。ソロアルバムEnVisionの楽譜集もデジタルでの発売であり、楽譜は一曲づつ購入できるという手軽な一面もある。

そんな中、音楽関連書であえて紙の書籍という媒体を選んだござさんの意図は何なのか?についても、考察してみようと思った。

 

でも個人的には、紙の本という形で世に出てくれて自分は嬉しかった。

本には納本制度というのがあって、新刊は必ず一部が国立国会図書館に納められるのだが、この本も納められたんだなあ……と実際に本を前にしながらしみじみ思う。

だが自分は手放しで喜ぶわけにはいかなかった。

 

本を売る

上記の通り、本というメディアは生き馬の目を抜くようなものすごい勢いで新刊が次々と発行され、既刊は刻一刻と記憶の彼方へ飛ばされていく運命にある。それは物理的に抗えない宿命のようなものだ。

ござさんの本が出ると耳にしたとき、そういう理由から一抹の不安が脳裏をよぎった。

 

発売にあたり出版社のヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスさんからはこのような特設サイトまで手掛けてくださっている。

要するに本の新刊というのは初動が全てというか、販促情報の拡散が全てを握っているというか。

ござの日ライブに豪華なカラーパンフレットまで用意されてサイン本販売会を開催されていたのはそういう背景があるからだ。新刊発売時にどれだけ話題にできるかという意味を含んでいるのだ。

 

それが顕著に表れているのが本の装丁だ。

ござさんのストピ動画に見られる「どれだけ派手か」を競うかのような原色のテロップは影を潜めて、おそらくデザイナーさんによってトータルコーディネートされた本、それに連動された特設サイトとパンフレットのカラーリング。多数掲載されているアー写も全部撮りおろし。衣装も知的で洒落ている。(今までのござさんの動画のサムネを知っている身から言わせてもらえば)はっきりいって凄すぎる。

というか出版の話を持ち掛けて下さった(?)のが数ある出版社の中でもYAMAHAさんだったというのが感慨深い。この含蓄深い事実を噛み締めるだけでも自分は一か月では足りなかった。日本の音楽シーンの現場を、あらゆる意味でリードし牽引されてきたYAMAHAさんから出版!??これは、少なくともピアノ界という主語の大きな場所において、ござさんはその一郭を占めるに至ったと言えるのではないか!???という自分の中での仮説を大切に反芻してみたり、また告知画像の下部に燦然と輝くYAMAHAさんのロゴを直視できずに目を逸らしたり……

 

あれ、話が横道にそれた。

 

ござの日ライブにおけるサイン本販売の様子を聞いていて思ったのだ。

本というメディアは出版された瞬間に既刊になる、つまり情報が過去のものになるという宿命を背負っている。それはCDアルバムという演奏の記録媒体においても、後から来る新しい波という脅威に常にさらされているという意味では、同じ立場である。

………ここまでは一般論だ。つまり要するに世間的に売れて儲かる=本の執筆を主な職業としてる人の話である。執筆活動はボランティアではない。

 

 

何が凄いのか

ござさんはピアニストの活動の一環として本を出版されたので、ここはTwitterでいえばトレンドにあがるくらい、書店の売り上げベースで上位に入るくらいヒット作となってほしいところではあるけど、そういう一過性の話題に頼る売り方はこの本の本質を見誤っていると言えるだろう。

そういう一時的な需要を満たしたうえで消費されていく手軽なファストフードのように扱われたくない。

 

この本には、ござさんが今までの人生の中で培ったものすべてを余すところなく

分類し、

研究され、

実際のピアノ演奏に役立つ形態で、

初・中級者向けに、

見開きページに楽譜と鍵盤図入りで編集し、

しかもそのアレンジパターン数30以上、

かつ模範演奏も全体では90を超える数が頒布されている。

 

ピアノアレンジ解説本にしては類を見ない充実ぶり。

つまんなくなると速攻で眠くなることで有名な自分でも、読んでみて、鍵盤の図通りに弾いてみようかな?と思わせる、工夫の数々。

大丈夫、とかやってみましょう、とかオッケーとか、あらゆる言葉で修飾して優しく初心者に語りかけてくれる丁寧な口調。

これらすべてにござさんの人柄があらわれている。

その姿勢、懇切丁寧というほかはない。

 

しかし、初心者向けにわかりやすい解説本、という分類なら他にも似たものはある。

ござさんの本を読んで真の凄さを実感し戦慄するのは、

見開きの初心者向けページでも、右側の中級者向けページと同様な内容を記載している点だ。

 

まずどのような読者層を想定するのかを執筆前に考えられたと思うが、ござさんの配信視聴者にはピアノ経験者、しかも結構上級者の方とか耳コピとかアレンジとかできる人々が多い気がする。ござさんの演奏はそういう「分かって聴いてる人」にこそ刺さるものがあると思う。

実際にネット上でもござさんアレンジ弾いてみた動画はよく目にする。

そうだよね、ござさんのアレンジは月刊ピアノの連載ひとつとっても和音がまずかっこいい又はおしゃれだし、繰り返しとかいうものは存在しないから弾いてて退屈しない。それらの難しいござさんアレンジを弾いてしまう腕前の人々にこそこの「ござ式」裏ワザの極意なる本は届いてほしいと思う。

それからござさんファン以外に、広くピアノ演奏者の人々にも。

この本のアレンジパターンは汎用データとして記載されていると思うから。

あっという間に使いこなされるはずだし、そういう弾いてみた動画が上がってこないかなーと自分はこっそり楽しみにしているので。(それを他力本願という。)

 

 

そういう有識者の方向けページと同様な内容で初心者向けに書かれてる点が、すごい。

なのに専門用語とかを一切使わず、しかも実際初心者が弾ける内容になっている。

それが32パターン。

すごい。

そして「大丈夫」だよっていう実際に教室で先生が声掛けしてくれてると錯覚するようなコメント。

さらに読み込みたければ、後半の章を読んで知識を掘り下げて身につけることもできる。

 

告知ツイートも初心者の人々もお気軽にどうぞ!という感じのコメントである。

 

ござさんは以前の配信かどこかで「ファンの人々の音楽的偏差値を上げてみたい」?とかいう趣旨のことを言われていた、気がする。

(あくまでうろ覚えの記憶だけど)

でもこの本を読むとやっぱりそういうござさんの思いが隅々にまで込められてるなと感じる。

 

「知ることって楽しいんだよ」

未知の領域を自らの手で開拓していくときの、わくわくどきどきする気持ちと不安がないまぜになったあの何とも言えない緊張感。

その醍醐味をファンにもピアノで体感してほしいという一心でこの本をまとめられたのかなあ。

ござさんは時には一日10時間とかいうピアノ練習やりながら配信も毎週やり、コンサートのリハとか、公式楽譜集の発売とかもあったし、月刊ピアノの連載と楽譜も作り、あとアレンジ楽譜の提供とか(雑務として確定申告もあったし)それらの合間に一年かけて本文を執筆し、さらに一年かけて校正・編集してたってことでしょ。

相当な執念と気合と思い入れがないと、そんな鬼のようなスケジュールこなせません。

 

さらに極めつけには。

結局この参考動画は90個を超えていたわけですが、一気に撮ったということはこの180ページに及ぶ長大な理論の中で語られているコードを全部覚えてたってことです。

もう一回言おう。

全部覚えてたということだ。

そんなござさんに敬意をこめて称号をお贈りしたいがそれには自分の良心が邪魔をするので心の中に留めておこう。

 

もう一回書くと、

「知ることって楽しいんだよ」

それはもう本の行間からこの言葉が飛び出してくるくらい、ござさんからのまさに火の玉直球ストレートなメッセージが全編にあふれてる、素敵なというよりはアツい本。

いやアツいとかいう一般用語で簡単に表現したくない。

 

もはやファンへのメッセージすら通り越してござさんのピアニスト人生を賭けた本と言ったほうがいいのかもしれない。

だってこの本にござさんの手の内は丁寧に解説されてるのですから。

いわば企業秘密を公開したわけですよ。

 

上記の通りござさんの動画や配信は、専門的知識(コードとか)がある人には刺さる内容ゆえにピアノを演奏されてる方も多く聞かれてるに違いないと書いた。それらの方々はいわば同業者なのですが彼らに広くござさんの小さい頃から積み上げてきた経験や知識を惜しみなく提供してることになるわけで。

そこで企業秘密として抱え込むより、業界共通の図書室みたいなもの?のような存在として、耳コピおよびコード弾き、かつポップスやJAZZなどいわゆる体系的な教育ツールが無い分野のアレンジ方法を共有して、業界(=ネットピアノ界)全体が盛り上がればいいなっていう、そういう意図を感じる。

 

でもこれは裏を返せば情報流出に他ならないわけで、個性が唯一にして最大の武器である演奏家としては、結果として存在意義を揺るがされかねない、いわば賭けでもある。

そういうリスクを冒してこの本は出版されていると自分は認識してる。

だから、余計にござさんの、本にこめる思いをひしひしと感じるんだ……

 

 

 

個人的な屈託

さて以下のコーナーはひとりごとです。

公的な意見はおいといて、自分の気持ちもどっかに書かないと収拾がつかない。

この本の第2章、つまり左右で難易度を分けて書いてくださってるアレンジ例の左側、ここは初心者向けだから専門用語もなく、鍵盤と手の図がありこの音を押さえれば素敵な和音に!みたいな感じで解説されている。

それだけ弾けば文字通り演奏になる。

 

しかし自分は右側のページも読みたかった。

調べれば、頑張れば読めるだろうと思って見開きページを全部読んでいった。

だってござさんが死力を尽くして専門的解釈を加えられたのが右側ページでしょ、それをスルーして埋めておくなんて人類の損失だ。断じてスルーなんてできない。

易しい解説したからわかるよね?っていう左側ページは、初心者レベルまでござさんが降りてきてくれててほんとにその優しさは痛いくらい刺さってくる。

でもそんなこっちに合わせてくれなくて結構です。と思って自分は必死に右側ページを調べた。

 

 

しかし右側ページをそんなスラスラと解読するのは無理だった。

さらに3章はござさんの音楽遍歴を語られているということだったので読むと、内容はさらに分野別になって詳しく音楽理論が語られていて、あわせてござさんの経歴が書かれているということであり、つまり2章よりもさらに本格的であってやっぱり習得できなかった。

ここまできて気がついた。

「見開きページは2~3日で1セットを理解するくらいがちょうどいいのでは?」

ということに。

手を置くだけとはいえ、なんでそういう理論になるのか?と掘り下げだすときりがなかったから。

 

 

ござの日ライブに行かれた某氏に託して購入したサイン本とか、YAMAHA出版の特集ページや本の見返しとか随所にある新しく撮られたアー写とか、というか特集ページもデザイン統一されててスタイリッシュで素敵~!とか、………

色々気になる現象は綺羅星のように目の前を過ぎていくのだけど、自分は見開きの右側ページをどうしても調べたかったので何もかもなおざりだった。

 

ござさんの生配信は5月からござの日ライブにかけて毎週、ライブ後も配信してくださったし、練習で弾きこんでいた影響が如実にあらわれててミスタッチもなく完璧、リズム感も研ぎ澄まされてて、いわゆるゴーストノート?がいつもより余計に盛られキレキレで豪華になっておりました。

本の行間から立ち昇るのが執念なら、配信は画面から飛び出してきそうな気迫がにじみ出ていた。

というかもう晴れて本も出版され、後顧の憂いはないと言わんばかりに前に進むだけのござさんは、生配信の音が断定に満ちてるというか一つ一つの音が前向きで明るかった。

 

そんな前向きなござさんに向き合うには、自分は本が読めてなさ過ぎて直視できなかったので生配信の感想も先月からずっと書いてませんでした。すいません。

 

初心者なのになんでとりあえず左ページだけにしとかなかったんだ!?と言われそうですが。

 

だってこの告知ツイートにお手軽って書いてたんで。

すぐに使えるとか。

それは左側ページのことだったんですが、このかわいくておしゃれな装丁の本の内容がそんなガチで凄いとか誰が想像できますかね?

しかも後半は音楽遍歴についてって書かれてますよね。

するとエッセイみたいな内容かな?って思うじゃないですか。

その正体は2章よりさらに本格的だったんですけどね。

 

 

 

個人的な屈託はこのへんまでにしときます。

 

とにかく、ござさんファンかどうかにかかわらず、クラシック以外の分野のピアノを弾いてみようという方々に広くお勧めできる本だったので(初心者の感想)、百聞は一見に如かずといいますし、まず一読されることをお勧めします。

ござさんアレンジ楽譜はまず月刊ピアノに連載されてるので、そういう曲も、このござさんの手法を踏まえてから見てみると何か違うものを感じられるかもしれない。

 

自分は、コードの感覚が身についてると(今更)もっとこの本は面白くなるんじゃないか、と思ってまじめにスケールとかから練習することにした。正確には練習してたが放置してたのでちゃんと毎日続けることにしてみた。

効果が出るには1年とか2年とかかかりそうな雰囲気だけど。