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このブログでは、ピアニスト 「ござ」さんについていつも書いてます。
Youtubeチャンネル ござ / Goza's Piano Channel - YouTubee
公式サイト ござ オフィシャルサイト
Twitter(現 X)ござ @本が出ました (@gprza) / X
この部屋では、だれでも読めるように書いてますが、今回は特にござさんの作る音楽の中から、弦楽合奏、管弦楽曲、吹奏楽などの編成の曲を基にしたアレンジに焦点を当てました。
オーケストラ曲の背景には何百年の時を経て連綿と続く膨大な歴史と、多様な楽器で表現される幅広くて奥深い森閑とした世界が存在する。
それらを題材に、周到に綿密に構築されたござさんのピアノアレンジ。
いつもyoutube配信で生演奏の即興でピアノソロに置き換えられている過程、そこにはどのような考察が加えられているのかをいろんな角度から、過去動画を使って考えてみる。
筆者は学生時代吹部だっただけのピアノはわからない一般人です。
ござさんの表現方法
ござさんの音楽は大別して方向性が2つあると思う。
自由に音楽的な形容詞を駆使してアレンジ
まず演奏できるジャンルがクラシック、JAZZやラテン、TVドラマやCM・映画音楽、ゲーム音楽、アニソン、ボカロ、J-POPや洋楽にロック、演歌、民族音楽に童謡、電車の発車メロディーに改札の通過音、古代の神への祈りからゲーム機の起動音まで……
およそ地球上に存在する音楽というか聞こえる音は全部掌中に納めてる。
さらに、それらの音楽を自在に操ってアレンジ=編曲。
バリエーションは、壮大とか荘厳風、ワルツ風、JAZZ風、ラテンとかボサノバ風、パリピ風とかユーロビート風、クラシックふう、演歌ふう、民族的とかエキゾチックふう、ホラー気味に、何かの調縛り等………
はっきりいってできない事はない(断言)
毎週のYoutube配信とかストリートピアノ動画、また解説動画などでは、奇想天外にして縦横無尽な世界観を遺憾なく発揮されてて、生放送で体験できる。
・毎週のYoutube配信:古いアーカイブ - YouTube
・ストリートピアノ動画:ストリートピアノ - YouTube
・解説動画:ピアノ講座(How to play Piano) - YouTube
【※詳しくは月刊ピアノ掲載の連載記事と楽譜をご覧いただければ、その多様な世界とどういう理論に基づいてアレンジしてるのかが詳しくわかるのでぜひご参照下さい】
動画リスト:月刊Piano「ござさんの All that Goza's Piano Arrange」 - YouTube
原曲に忠実に演奏
Youtubeとは別に、ござさんはツイキャスで"突発ランダムレパートリー練習無言配信"をたまに放送している。
※ツイキャスアーカイブ集:Archive - ござ 🎹 (@gprza) - TwitCasting
ござさんのレパートリーは公称2100曲以上。
こつこつと作っているレパートリー一覧、ここ1年で弾けない曲を除外したり新たに弾けると判明した曲を追加して行った結果、2000曲→ 2114曲になりました
— ござ @本が出ました (@gprza) 2023年10月25日
この膨大な数のレパートリーを実質現役で弾けるレギュラーとして維持するために、ツイキャスは計り知れない効果があるようだ。Youtube配信で演奏される曲にも珍しい曲が増えて来たのもこのキャスが関連しているかもしれない。でもそれは目に見える直接的な効果にすぎない。
プレーンな状態の原曲が記憶の引き出しにあるからこそ、ござさんの本領である自由闊達な発想、縦横無尽にジャンルを往来する手法が鮮烈に活きる。
そういう意味では、練習ツイキャスはファンが聞いていて楽しいだけではなくござさんの音楽そのものを見えないところで支えている根幹であると言っても過言ではない。
つまりツイキャスはござさんの音楽を補完する手段であり、それそのものが目的ではないという言い方もできるだろう。
ござさんのチャンネル、および音楽活動は多岐にわたっていて全容を把握するのは容易ではない。
一見すると単なる小部屋。
しかし何回カーテンを開けても実態がわからない小部屋のようで……だからこそ時折垣間見える底知れない深淵に魅入られて、二度と抜けられなくなるのだ……
先入観から抱いた偶像はいつも軽々と打ち破られる。
テンプレート、つまり常識的な型にはどうやっても嵌らないのだろう。
ござさんていう演奏家は。
管弦楽曲・吹奏楽曲について
この稿では"原曲に忠実に再現"された演奏から、特に管弦楽曲・吹奏楽曲のアレンジに絞ってござさんの演奏を振り返ってみたい。
・ネットでそういうお題をいただいたので考えてみる気になったのはある。
・自分が学生時代に吹部だった(という遠い記憶)から、その分野の曲なら、アレンジの組成から考えることが出来るのもある。
・逆にピアノ曲は小さい頃練習が苦手だったこともあって避けて通って来たので、どういう曲があってききどころがどこかを解説できないという意味でもある。
管弦楽曲って何?
狭義でいうところの管弦楽曲とはクラシックの交響曲、交響詩、交響組曲など、いわゆる音楽ホールで演奏されることの多いオーケストラの曲って意味である。
オーケストラって何だ。弦楽器5部と管楽器、打楽器から成る編成の合奏団と言えばいいかな?でも人数的には70~100人を超えたりする大所帯。
オケの演奏はホールだけに留まらない。
バレエとかオペラなどの舞台音楽だけではなく、クラシックのオケ曲はTVやゲームなどにメディアミックスでアレンジされてりしてて馴染みのあるものも多い。また、映画音楽やミュージカルなどにもオーケストラ曲はサントラとして使われているし、JAZZやラテンでは主に管楽器(サックスやクラリネット、トランペットやトロンボーン等)が取り入れられている。ていうかJAZZのウッドベースは弦楽器のBASS音域=コントラバスのことである。
というわけで管弦楽曲の定義がそもそも身近過ぎてあいまい。
ござさんのレパートリーもあらゆる分野を網羅しすぎて何を題材にすればいいのやら?
ピアノソロにおいて基準にするべき指標
とにかくござさんの言葉を借りれば、指標はこのようである。つまりどれかを突出して重視するのではなくできるだけ正三角形に近づけたいようだ。
このツイートはあくまでござさんがアレンジ楽譜を作る際のことらしいが、ここでは実際にござさんが演奏し、配信でファンが聴く前提で考察する。
原曲を再現する形のピアノアレンジを作る際、指の都合上原曲から削らなければならない要素が必ず出てくるのですが、その取捨選択の指標として、「この3角形がなるべく大きくなるように設計する」ということを考えています。互いが反比例しやすい要素なのでバランスが大事。 pic.twitter.com/2869JSAMww
— ござ @本が出ました (@gprza) 2019年7月26日
① 弾きやすさ
ござさんのレパートリーは電車の発車音とか、生活音からして再現するくらいなのでピアノ曲はほんの一部といっていい。オーケストラ曲も多分に漏れずピアノ演奏を想定して書かれてはいない。つまり奏者側の都合でいうと鍵盤では演奏に適さない、または物理的に演奏不可能な曲も多い。
ロックバンドとかアニソンの"リズムのバッキングとボーカル、ベースライン"という組成とは違って、オケ曲は高音部・中音域・低音楽器に分かれる。高音部が旋律とは限らない。※ちなみにオケの打楽器部門は効果音も再現したり、必ずしもリズムのバッキング担当ではない。
もうお分かりですね?
ピアノ向けにアレンジして演奏するとき、右手旋律と左手低音部orリズムでは見るからに足りないパートがある。
中音域です。またはいくつかのフレーズが色んな楽器で複数同時進行してて、両手=2つのパートだけでは再現できないときも含む。
両手だけじゃ足りないとござさんがつぶやいてるのはこういう意味です。
ここをカバーするべくござさんは
・手を交差
・第三の手奏法を使って両手で交互に中音域を拾う(つまり旋律やベースラインを弾きつつ余りの指で)
・たまに単発で入る低音を拾いに左手がありえない跳躍
……とかやってると演奏はだんだん人類には不可能な域に近づいてくる。
また、オケ曲は旋律だけでも複数の楽器が受け持ち常に和音で動いてたりする。
それをどうやって鍵盤だけで演出するのか?
……せや(゚∀゚)――!!、右手で旋律の和音を全カバーしたらええんや!!!
( ↑↑唐突なニセ関西弁)
他のジャンルの曲でも共通してるけれども、ござさんの右手は常に16分音符だろうが複数の和音を押さえて動いてる。16分音符で和音で動くのがどんだけ非人間的か、しかも平行な動きではない。素人の自分には筆舌に尽くしがたい現象としかいえない。
このように原曲を再現すればするほど奏者の弾きやすさの指数は低くなる。そこをござさんはひたすら人力で、つまりコソ練による力業で補っていると思われる。
隙あらば欲しい音を一瞬でも入れてきたりして、ほんと聴いてて油断ならない(喜んでるファン目線)。
② 演奏効果
弾きやすさと反比例。
演奏にコブシが効いていたりキメがばっちりだったり、バッキングのビートがすごかったりするほど聴衆への訴求度は高くなるが演奏のハードルも上がる。
そこへのこだわりと実際の完成度自体は、13年前の配信当初からずっと変わらないのではとさえ思う。
技巧的な点では、そして配信の機材の充実度という点ではまるで別物だとしても、音楽へのこだわりだけは最初からずっと一緒なのではないか。
昔から変わったところがあるとしたら、たゆまぬ練習によって得られたアレンジの持ち札の多彩さ、というところだろうか。(コード進行とか和音の工夫とかそういう技巧的な点は素人はわからないけど)
③ 原曲再現性
弾きやすさとは反比例する指数。盛れば盛るほど豪華になる。
オクターブで動いてみて旋律のキメ、ガツンと来るベースラインなど印象的な場面を特に強調
木管楽器の装飾音を丁寧に拾う
ピチカートは軽快にスタッカートで、ソロヴァイオリンの重音は正確に和音で再現
鍵盤楽器はいわば構造は打楽器である。音が発生してから減衰していく仕組み。ペダルで響かせる機能もついてるが減衰がゆるやかになる程度、響きが多少長くなるだけ。音量を同じように保持、むしろクレッシェンドで豊かに増幅とかいうことはできない。
じゃあどうするのか?
ビブラートはオクターブトレモロにしてみたり……また、ギターのトレモロとか管楽器の曲で高速同音タンギングの場合はピアノで高速同音連打しているようだ。そうやってオペラのアリアとか、弦楽器の旋律の保持音とかビブラートで印象的に奏でられる旋律のキメ部分を抒情的に演出されている。
これらの3項目をできるだけ同率で演奏に盛り込みたい。
いや無理でしょ。どこかが必然的に弱くなる。
って思いつつ、配信で驚愕の演奏を聞いては顎が外れそうになり、原曲そのままの響きが広がってきて感動に涙を禁じ得なかったりする。
ござさんの演奏には素人目で見てもそんな工夫がされてるのは一目瞭然だ。
ご自分ではそんな点に一度も言及されないので今更ながらこの記事で振り返るのだが。
要するにそれらはござさんにとって手段にすぎなくて、目的はあくまで視聴者のリクエストに応えて、みんなが聴いて楽しめる音楽を届けることに主眼を置いているっていうことなのかなあ。
そのためにはどんな手段もいとわないということか。
例:限りなく全部盛りアレンジのストリートピアノ動画
オーケストラ原曲のストピ動画として、映画音楽をあげてみよう。どの演奏も、オーケストラの豊かな響きと、複雑な構成の多様なパートが聞こえてくるはずだ。
2022.1.30投稿のストリートピアノ動画
超激アツ映画音楽メドレーで冬の駅が熱狂の嵐!! - YouTube
2019.11.28投稿の都庁ピアノ動画
超有名映画ソングメドレー弾いたらまた外国人に話しかけられた!! - YouTube
(おまけ①:ディズニーの曲も原曲はオケ。このアレンジもすさまじい。)
【ストリートピアノ】パレード+プリンセス!超濃縮ディズニーメドレー! - YouTube
(おまけ②:ジブリの曲もオケが多い。このアレンジも色々な楽器の音が聞こえる)
ストリートでジブリ何曲弾けるかチャレンジ!そして奇跡の結果に…! - YouTube
編曲の設計と、音響の調整
ござさんは家のシンセ、RolandのFANTOM8で実際に楽器の音源ソフトで打ち込みデータも作れたりする。ほかにも色んな音源ソフトをお持ちのはずだが、ここでは特に管弦楽のシンセ音源ソフトについて振り返る。
これはモルダウの終盤のところです。2023/10/29のYoutube配信でもワルツコーナーあたりでこの展開が一瞬使われててムネアツです。
テストがてら撮影してたらすごくカッコイイのができそうな予感がしてきたような気がする。 pic.twitter.com/mr7vIZj1z4
— ござ @本が出ました (@gprza) 2020年8月5日
次に挙げるアレンジはこの後の2020/8/16の納涼ミニコンサートおよびネピサマリベンジ配信で披露されるわけですが。
今日の副産物。こんなオケを3曲ほど作りました。ピアノで適当に合わせるの楽しすぎる pic.twitter.com/u8PXCUgxIu
— ござ @本が出ました (@gprza) 2020年8月9日
ホーンセクション(金管楽器)の打ち込みをしたのもみじ以来で久しぶりだったんですけど、難し楽しい。ベロシティと打点をバラして人間味を出したり、ちゃんとアーティキュレーションを入力するのがミソですね pic.twitter.com/xEizrjR58p
— ござ @本が出ました (@gprza) 2020年8月9日
ござさんは吹部でクラリネット、ユーフォニウムという木管・金管パート両方経験されていたこともあり、様々な楽器の実際の音の組成に精通している。
そのイメージを投影し、そのまま楽曲の構成に活かすという、やってることがすでに音響エンジニアになってきて、ござさん何の職業だったっけ、ってなるんですが。
【実際の配信:2020/8/16 納涼ミニコンサート配信】
※注意・この時代、配信機材のスペックの事情で音が頻繁に飛んでます。
【実際の配信:今年の2023/7/29ネピサマ 配信】
この配信の冒頭で、上記の2020年納涼コンサートでもやっていた手作りバッキング音源に合わせてピアノ演奏ライブというのをやってる。
お題は映画音楽。納涼コンサートではパソコンのスペック上音切れしてたキャラバンの到着もちゃんと聞こえます。(あれから段階的に配信機材を一新されている)
(通常のYoutube配信では、ござさんの理論上、何のジャンルでも設計してるアレンジを実際弾くのは物理上困難と言いながらも一人で演奏をこなされている)
この配信で取り上げられてる映画音楽はオーケストラ曲が多く、壮大で多層的な構造の響きが特徴。バッキング音源を背に両手が自由になったござさんの演奏は、和音もより豪華なコード進行(たぶん)、合間で聞こえる効果音的なのも全部入れてきて、いつも想定してるほんとのアレンジはこうなんだなっていう完成形を見ることができる。
……あれ?
実際にいろんな楽器の音を使って音源作れるならもはやオーケストラの生演奏もいらないし、ござさんのピアノで聴かなくてもござさん自分で合奏音源つくれちゃうじゃん。もうオーケストラの生演奏コンサートも、ピアノでアレンジ演奏もいらないじゃん?
って思いましたね、そこのあなた?
違います、シンセで演奏する音源ソフトはあくまで現実の楽器の音をサンプリングしたデジタルデータ、仮想現実みたいな存在に過ぎない。
それらの音を使って単純に和音でシンセで弾いてもいわば仮想の響きの域を出ない。
ござさんは、実際の楽器の音色や奏法を熟知してるから、音源創作にもリアルさが活きる。
リアルな生の楽器の音、リアルな楽器の合奏の響きをイメージできるから、そのままシームレスに鍵盤上に色々な音色がよみがえる。
ただシンセ音源使って鍵盤を押さえるのとは、そこが理念として根本的に違う。
物理的な仕組みを超えてなんか概念としてござさんはシンセ音源をも操っているように見える。
ーーーーーここまでは、シンセ音源のピアノ以外の楽器の音をつかって楽曲をアレンジする場合について言及した。
そこを踏まえると、自然といつもの電子ピアノの演奏が様々な楽器の音色を想定したものになってくるのもうなずける。
でもくれぐれもいうけど、シンセの機能で音源ソフトの調整とか、音響エンジニアの領域だと思うんですよね。
さらに管弦楽的な響き、楽器そのものの音色を知っているとして、実際に和音とかを工夫して演奏に活かすのは上記の3つの条件が相反するとおり、バランスよく実現させるのは理論的に困難といえる。
それを涼しい顔で毎週生配信で2時間やってるとか、ちょっと大丈夫ですかねこの人(誉め言葉)。
ストリートピアノ動画にもクラシックのオケ曲アレンジはあるにはある。
史上最難!?なんでもアリな連続リクエストに全力で挑んだ結果…! - YouTube
ござさんの描く世界を現出してるという意味では大好きな動画、これも自分は鬼リピ。
しかし。
ストリートピアノの真髄はあくまで個性だと思うんですよ(演奏家としては)。
オケ曲のアレンジを純粋に楽しみたい、原曲をござさんの演奏で楽しみたい、って場合にはあくまで自分は生配信での演奏を推す(独断と偏見により)。
よりじっくりと深くござさんの世界を味わえるから。
それでは何曲か実際の配信(主にメンバー限定公開です、ご了承ください)を振り返りながら、実際にどうすごいのか概観してみよう。
キーポイント:3本の手奏法
※参考動画:ぜろいちさんの動画をお借りします
「3本の手奏法」ソロピアノアレンジに3本目の手を入れる方法 - YouTube
オーケストラ曲のアレンジ(生配信は頭出し済み)
まず作曲家別にいきます
①チャイコフスキー
序曲「1812年」
2020/5/14:顔出しピアノ リクエスト受付中! / Piano live 2020/05/14 - YouTube
この回は交響曲6番「悲愴」三楽章という、現在ではリクが通らない幻の曲の演奏もあったのですがそこはスルーし、意地でも1812年について語りたい。
※原曲:チャイコフスキー 1812年(序曲) 小澤征爾 - YouTube
※スヴェトラーノフ指揮版:スヴェトラーノフ指揮「1812」 0001 - YouTube
ナポレオン戦争と、ロシアの勝利を描いた15分を超える管弦楽曲。
この回ではござさんは解説を交えながらパートごとに分解して弾いてくれているというレア中のレア回。(※ただし通信状況が悪く、音に対して動画が20秒遅れのため鍵盤は参考にならないけど)色んなフレーズが波状に折り重なって展開する中、ござさんは和音をひとつづつ確認しながら曲の歴史的背景、それぞれのフレーズの意味、調の展開も全部説明してくださってる。いやなんでいちいち和音全部覚えてるんですか?和音の展開が単純とかいうオチですか?(そんなわけない)謎です。この長大な曲をなんで楽譜なしで暗記してるんだ?で、弾いてくれてるフレーズがいちいちリズムも正確、和音もぴったりですごい。原曲知ってる身からすると凄すぎてぞっとする。
ピアノ協奏曲第一番
2023/9/3:スタクラありがとうございましたリクエスト募集中! 2023/09/03 - YouTube
チャイコフスキーはメロディメーカーとして親しまれ、名実ともに名曲も多いがその筆頭として挙げられ恐らくクラシック知らない人でもこれと白鳥の湖くらいは知ってるはず、っていうくらい有名。この曲、みんなどこかで聞いた事あるでしょ?ちなみに自分はゲームボーイ(の何かのゲーム)のボス戦で知りました。というテンプレ知識はさておき。
協奏曲ってオーケストラとソロ楽器の合奏なわけです。オケをバックにしたソロ楽器のパートは華やかで技巧に富んだ、いわゆる映える美しい旋律が多い。そんなソリストの業が存分に光るように作曲されたソロパートと、オーケストラのバックを一人でやってるのがまずおかしい(褒めてる)。まあソリストの冒頭の部分は両手で全力で和音を3オクターブ移動してるだけなのですがね(とサラッという)。で、同時にオーケストラの大音量全合奏での有名な旋律をやりながら、そしてしっかり聴かせながら、さらに全部和音で動けるていうか覚えてるのもすごい。
チャイコフスキーの曲はどれも豪華で贅沢、宮廷演奏会のような雰囲気に浸れる。
②ベートーベン
自分は古典派については特に語れるほど原曲を聴き込んでないのでノーコメント…でも古典派はあまりにも現代につながるクラシック音楽の基礎なので、ちょっと振り返る。
なんとなくベートーヴェンの交響曲主題書き出し作業(単なる趣味) pic.twitter.com/DSL5UeYbXF
— ござ @本が出ました (@gprza) 2023年10月8日
ベートーベンの交響曲を改めて聴き直したので、その勢いでいろいろな古典派の楽曲を聴き比べ中。モーツァルトとハイドンとベートーベンのピアノソナタを聴き比べすると、ベートーベンの転調具合が凄まじい。ピアノを習っていた頃はあまり意識しなかったけど、強弱も激しくて大分攻めた曲調。
— ござ @本が出ました (@gprza) 2023年10月11日
ござさんもこう語られていることだし(といってお茶を濁す)、特に下にURL貼った4/22はベートーベンだけのメドレーがあったりする。この記事では特に管弦楽曲に焦点を当ててるけど、ござさんの音楽は全体で一つのストーリー、メドレーにも起伏と緩急の流れをつけてきちんと起承転結があるので、その曲だけでなくできればメドレー単位で鑑賞すると、ござさんの稀代のストーリーテラーとしての語りをより深く堪能できるだろう。
交響曲第6番「田園」と、第9番「合唱付き」(イントロから完全版)
2023/4/22:【ピアノ配信】本が発売されますリクエスト募集中 2023/04/22 - YouTube
交響曲第7番第一楽章
2022/9/13:ピアノ配信 リクエスト募集中 2022/09/13 - YouTube
相変わらずござさんの右手は常に和音を堅実に押さえてて、左手はきっちりコントラバスの動きを追っている。合唱付きの通称歓喜の歌も、右手を混声合唱の和音にしてきっちり歌っている。
合唱とソリスト、管楽器、弦楽器の音の特徴をリアルに捉えてて、鍵盤の演奏にそのまま印象を如実に映し出す。奏法の異なる楽器の響きをも把握して反映させている。
※番外編:都庁ピアノでも第九を独自にアレンジされて演奏している。
【都庁】ベートーヴェンメドレー弾いたら外国の方に話しかけられた! - YouTube
③ラヴェル
ボレロ
2020/12/4:グランドピアノソロ配信! 2020/12/04 - YouTube
2021/2/15:ねぴらぼお疲れ様でしたグランドピアノ配信 2021/02/15 - YouTube
ラヴェルは時代で言えば印象派から20世紀にさしかかるころ、作品は多様なジャンルにわたっているがとりわけ特筆すべきなのは、色彩豊かなオーケストレーション。
ボレロは本来バレエ音楽だが、展開が最初から一つのクレッシェンドだけで構成、メロディはAメロとその発展形のBメロを繰り返すだけ、リズムパートはずっとスネアドラムが担当というふうに、時代を超えて今見ても斬新な展開の曲であり、色々な編曲も存在する。
ところでこの曲も、ござさんのアレンジは各楽器の微妙な音色をガチで再現しているが、過去の自分の感想で全て言及してるのでご参照ください。
※これをちゃんと聴くにはできればイヤホン等の環境を勧める。でないとござさんが拾って押さえてる全ての音を聞き分けるのは難しい。
ーーー以下、2020/12/4の自分のブログから、ボレロの感想を抜粋しますーーー
何がすごいって、スネアのリズムを左手親指だけでやってる所。ずーっと連打。やばい(語彙力)。テンポ走り気味なのにスネアより速くかつ正確な連打。まじやばい。で、その合間のリズムを他の指4本でやる所(ピツィカートのふんわり感まで再現)。←親指とリズムは別なのに。その後もどっかの指で連打を継続、同時に旋律を和音で動いて、終盤には全楽器のリズム分を左手だけで拾って中〜低音域で忙しくカバー……あーもうキリがないわ。どうなっとん。
何がやばいって理屈?で書くと↑こうだけど多分頭で考えてない所。若くは考えつつ同時進行で弾ける所。原曲で聞こえる和音や質感を何となく全部弾いたら再現できたとか言ってそう。(↑多分全部のアレンジに共通するんだろうけど)
何かすごいを通り越して怖い。ぞーーーーっとする。イケナイものを聴いてしまった感じ。
で、最後の盛り上がりに変わった和音をねじ込んでいる、気がする(1:15:22の音)やっぱお茶目。からバスドラムの低音キメつつ金管グリッサンド再現からユニゾンでなだれ込んでいく。かっこよすぎ。( ・∇・)ポカーン(これやると、いつもどこが端折られるかというと中間部のソロパート。ちょっと寂しいが全部やると15分超えるから止む無し。)
「展覧会の絵」からプロムナード、グノームス(小人)、キエフの大門
2020/1/19:顔出しピアノ リクエスト受付中! / Piano live 2020/01/19 - YouTube
原曲はムソルグスキーのピアノ曲だがそもそもはそんなに知られた曲ではなかった。広く有名になったのはラヴェルの編曲版が出てからだ。リムスキーコルサコフ版もあるけど聴くにも演奏するにも管弦楽アレンジは絶対にラヴェル版を薦める。ラヴェル版以外は存在を認めない(独断と偏見により)。
この回、エレピ風音源でいい雰囲気の中、ここだけ音源をグランドピアノ風に変えている、ござさんガチだな!!???
第一プロムナード
あまりにも有名な主題のトランペットソロをござさんは次のリクエストをペンギンの500円玉の視界で探しながらノールックで右手だけで弾く。ペンギン時代はパソコン画面の位置からか、リク拾うために常にノールック。で、左手は主題が展開していくにつれバッキングが重厚になってくるので和音で動く。ノールックで。すごすぎる。
グノームス(小人)
ドラクエで言うゴブリン。大地の精、伝説上の小人をあらわしているらしい。断片的でどことなく不穏な音がラヴェルによって現代的にアレンジされている。冒頭部分だけだけど、じゅうぶん不気味さが伝わる印象的な演奏。
ここから組曲には10以上の曲があるが、いずれも原曲でもノーストップでつながるしござさんはグノームスからアレンジして壮大風にし(ござさんの十八番である)、最終曲へつなげている。(1:20:48~1:21:05で創作アレンジを足してる)
キエフの大門(終曲)
この曲の出だしが組曲の中でも最高潮のひとつといっていい盛り上がりなのでござさんはそこへピークを持ってくる。もう次のリクエストを拾ったからか?手前の画面へ視線を向けずひたすら鍵盤をガン見して和音を確かめながら弾くござさん。当たり前である。大編成のオーケストラが渾身の全合奏でぶつけてくるクライマックスなので(この曲の最初が)。原曲ではその後静かな祈りのようなパートを2回織り交ぜながら展開していくがござさんはそこは端折って終盤に行ってるが、どちらにしてもこの曲は教会で謳われるコラールつまり聖歌の和音と曲の展開をもとにした宗教曲の体裁をとっている。楽譜見ないで弾けてるということはそういう設定と展開も織り込み済み、覚えてて弾いてるみたいです。この曲がコラールだってことを。ござさん、なんで覚えてるんですか?
ラストは(キエフの町を想定してると思われる)教会の鐘が荘厳に打ち鳴らされる中、重々しくゆったりと主題が繰り返されるのが、原曲のオケ版。
しかし。ござさんはそんなん間延びするだけやん。つまんない。と思われたのか?右手はアップテンポかつリズミカルな旋律に置き換えられ、左手はランダムに跳躍してる。ん?左手が鐘の音ってことですか?そういうアレンジですか?
一番謎なのはこのキエフの大門の展開だけ見ても、その場で即興で考えてるとは言い難い緻密に計算された完成度を誇るってことです。どうなってるんですか?
※キエフの大門?そんな曲知らんしって人は、配信の1:21:33~を聴いてみてください。いわゆるナニコレ珍百景で有名なパートです。みんな耳にした事あるよね?
ついでに同日2020/1/19の配信からもう2曲。怖いやつばっかり。
④オルフの世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」より「おお、運命の女神よ」
念のためもう一回生配信URL:顔出しピアノ リクエスト受付中! / Piano live 2020/01/19 - YouTube
印象がモーツァルトのレクイエム「怒りの日」みたいですね、厳粛な雰囲気で怖いですね、夜に聞きたくないです。
ござさんの左手:通奏低音でBASS音域をむりやり跳躍で轟かせながら、同時にそのオクターブ上のBASS音域の16分音符の伴奏を不気味に刻むござさん。怖い。
ござさんの右手:旋律は原曲は混成4部合唱なので右手もつねに和音4つ?で動く(もはやそれが通常運転)。どんだけ弾きにくい事か(素人目線)。旋律は展開に従ってオクターブ上がっていって雰囲気は厳粛さを極め……いや?歌詞を聴いてみると世俗って曲名なだけあって庶民ぽく牧歌的なんですけどね。
ござさんは一切手綱を緩めずいっきに終幕へとなだれ込む。
※原曲(頭出し済み):カルミナ・ブラーナ - YouTube
怖い曲をもうひとついってみよー!(ΦωΦ)
⑤ムソルグスキーの交響詩「禿山の一夜」
2020/1/10:顔出しピアノ リクエスト受付中! / Piano live 2020/01/10 - YouTube
※原曲動画:・原典版(こっちのがガチで怖い)禿山の一夜(原典版) - YouTube
・リムスキー=コルサコフ編曲(ディズニー映画のファンタジアで使われている) ムソルグスキー - 交響詩《はげ山の一夜》(リムスキー=コルサコフ編曲) ゲルギエフ ウィーンフィル - YouTube
作曲家は上記の展覧会の絵と同じく、ムソルグスキーである。シェイクスピアの真夏の夜の夢と同様、ヨーロッパの夏至祭を題材に精霊や魔物たちが集まり夜明けとともに去るようすを写実的に描いた曲。
要するにお題が怖い。不気味。配信でちっとも映えない。自分は時折、この曲をリクエストしてみてるがちっとも拾われない。当たり前である。小さい子がこれ聞いたら泣きだすじゃないですか。
容赦なく叩きつけられるござさんの左手による低音。不安を煽る和音で構成される旋律。風雲急を告げる雰囲気がかもしだされる。合間の16分音符もきっちり忘れないのでさらに恐怖感が増幅。怖い!!!
⑥プッチーニの歌劇「トゥーランドット」ーアリア「誰も寝てはならぬ」
2020/8/6:顔出しピアノ リクエスト受付中! / Piano live 2020/08/06 - YouTube
2022/12/5:(サビのみなら)ピアノ配信 リクエスト募集中 2022/12/05 - YouTube
この曲はオペラのアリアなので、前奏に続いてござさんは歌の部分も全曲演奏されている。というかすでに前奏部分からエンジン全開の全部盛り豪華版。
相変わらず右手は一人二役。アリアの合間の弦楽器の旋律も左手が全部持って行って主役を張る迫力。
細かいことはおいといて、アリアを聴きながら自分で歌ってみるとぴったり嵌まるのでこのアレンジの楽しみ方はそこじゃないでしょうか。
⑦ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」ーワルキューレの騎行
ピアノ配信 リクエスト募集中 2022/10/29 - YouTube
※正式な曲名は楽劇「ニーベルングの指環」から第一夜「ワルキューレ」より、ワルキューレの騎行である。
この回の独特なリバーブ?のせいか、劇的な響きもあいまってここだけラジオから交響楽団の演奏流れてきてるんですかっていうリアリティ。
まずこの曲は構造的に無理なんですよね(唐突)。
【原曲 オケの参照動画:CLASSICAL MUSIC| BEST OF WAGNER: The Valkyrie, WWV 86b: "The ride of the Valkyries" - HD - YouTube 】
木管楽器のトリル、ホルンと低音楽器の裏拍、ヴァイオリンとフルートの高速アルペジオから始まってメイン旋律の金管楽器が全員ユニゾンで堂々と現れる。
この時点で手が4つ要るのおわかりですかね。
無理なんですよね。
ってことを念頭に入れていただければ、
右手で金管のユニゾン旋律と木管楽器のトリルを同時にやってる事にΣ(゚д゚lll) 驚愕しながらも、左手が何やってるのか が嫌でも分かってきて、さらに衝撃を受ける事でしょう。そう、たぶんホルンの裏拍とヴァイオリンの高速アルペジオをやってるんですよ、恐ろしい事です……
前人未踏とはこのこと。
ワーグナーの重厚な和音が、渾身の演奏から生まれる迫力を後ろから強力に援護する。
ただ、驚きと畏敬の念がわきあがるばかりである。
クラシックメドレーの最終盤を飾る名曲、ほかにもこの2022/10/29の配信ではシューベルトの軍隊行進曲、モンティのチャルダッシュ、グリーグのピアノ協奏曲、おもちゃの交響曲、ヴィヴァルディの四季から夏など、どれも名アレンジ揃い。一曲は瞬きほどの長さ、そこにそれぞれの曲のイメージをアグレッシブに切り取っている。
特に美しき青きドナウの左手の毎2拍目をござさんはきっちり微妙に遅らせている。その流麗なリズムは通常のワルツと違い、ウィンナワルツならではの舞踏会でのステップを彷彿とさせる。
ーー以下、ムダに長いヲタトーク
(ワルキューレの騎行のすぐ次の、リヒャルトシュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」はこの記事では取り上げない。リヒャルトシュトラウスの真髄は多彩なオーケストレーション、ここでござさんが弾いてる主題だけじゃ全容がちっともわからないので。でもこの主題はクーベリックの2001年宇宙の旅の映画でも使われた有名なものなので、配信でやるとなるとこれがまず出てくるのはやむを得ないところなので反論もしない。リヒャルトシュトラウスをやってくれるなら、アルプス交響曲をダイジェスト版にするとか、ドン・ファンのイントロとか、ホルン協奏曲とか、そっちが聴きたい(わがまま大魔王)
⑧ホルストの組曲「惑星」から木星
2022/7/9 ピアノ配信 リクエスト募集中 2022/07/09 - YouTube
この回が、イントロからほぼフル版。
冒頭の木管楽器の16分音符の和音を両手で軽快に表現、弦楽器の跳ねる旋律とか、この曲も和音もリズムも全部針の穴のレベルで完コピしてて、近未来感というか宇宙観が醸し出されてる。
平原綾香がカバーしてる有名な中間部は言及不要なので省略。
おまけ:木星の演奏回数はとても多いので、様々なアレンジが存在する。そのなかでも原曲が尊重されつつ新しい曲へ生まれ変わってる回を貼っておく。
2023/3/4ウッドベースの自動伴奏つき演奏
【ピアノ配信】動画投稿しましたリクエスト募集中 2023/03/04 - YouTube
2022/10/10 幻想的アレンジ
ピアノ配信 リクエスト募集中 2022/10/10 - YouTube
⑨ドヴォルザークの交響曲9番「新世界より」第二、第四楽章
2022/8/20:ピアノ配信 リクエスト募集中 2022/08/20 - YouTube
この回の第二楽章、通称「家路」は、メインの旋律をイングリッシュホルンが朴訥なダブルリードの音色で緩やかなビブラートにのせ、滔々と歌い上げる名曲。
(※じっさいのイングリッシュホルンの音色はこちらの動画でどうぞ:頭出し済み)Dvořák: 9. Sinfonie (»Aus der Neuen Welt«) ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Andrés Orozco-Estrada - YouTube
ござさんの演奏は随一の聴かせ処であるビブラートを、旋律の合間に嵌め込まれた微かなアルペジオで繊細にかつ情感豊かに語る。このビブラートだけで切々と訴えかけるような哀愁ある調べをピアノで表現しきる様、見事というほかない。通奏低音が低く重々しく鐘のように鳴らされる中を、滑るようにアルペジオに乗って静かに語られる主旋律。
そこにはただ、夕闇に覆われる寸前のような厳粛で静謐な空間が広がっている……
第四楽章は説明不要だろう、交響曲9番を代表する冒頭のメイン旋律は様々なところで引用されて使われているからだ。
ドヴォルザークがアメリカに渡っていた時代に作曲され、新大陸の印象を描いていると思われがちだけど作風はがっつりとボヘミア民謡の影響が色濃く出ている。つまりドヴォルザークの慣れ親しんだ故郷チェコの音楽そのままである。(実際に新大陸に親しめず、ドヴォルザークは数年後アメリカを後にし故郷チェコへ帰っている)
この曲も両手では絶対に足りないので指が空いた隙に16分音符を使ったりして、原曲の断定的な緊張感を否応にも高めている。全合奏の和音と金管のユニゾンの旋律、これやるとピアノ両手で身動きできないはずだけど、どこからともなく間髪入れずに現れる他パートの装飾音。なぜ?どうやって?
三本の手奏法の効果はここでも遺憾なく発揮されている。
ロックとかアニソンとかのビートを埋める左手にも見られるけどそういう聞き過ごしがちな、でも重要な音をきっちり恣意的に入れることで、聴き手の充足度を絶対に満たしてやるという意図が感じられる……
※2022/8/20の配信ではほかにも白鳥の湖、展覧会の絵からプロムナード、カルメンのハバネラとか名曲にして名演奏ぞろいなので必聴です。
⑩スメタナの連作交響詩「わが祖国」からーモルダウ(←ドイツ語、チェコ語ではヴルダヴァ)
2020/1/10:顔出しピアノ リクエスト受付中! / Piano live 2020/01/10 - YouTube
このわが祖国って曲はチェコにおける第二の国歌みたいな存在であり、毎年スメタナの命日5/12に幕を開ける「プラハの春音楽祭」で必ず演奏される曲。いわば19世紀国民楽派による潮流の筆頭ともいえる名曲だ。6曲からなる構成で全曲だと70分を超える大作である。その第二曲であるモルダウは、中間部の旋律の美しさからそこだけを編集して合唱曲としてもよく取り上げられることで有名。
ござさんも配信でモルダウといえば中間部の旋律を特に演奏されることが多いが、この回の配信では最初のイントロから(短縮版アレンジだけど)モルダウを全曲演奏されている。え?1/10はそもそもショパンのレパートリーを全部っていうくらい演奏されたことで有名?この記事は管弦楽曲の記事なのでそこはスルーします。あしからず。
確かこの旋律の低音部でダバダバした動きの左手は、あれじゃないのかな幻想即興曲のメロディを左手で練習して鍛えた動きに似てるのでスムーズに弾けてるんじゃないのかな(テキトー)。といううねる動きのベースラインというか低音部が特徴。
例に漏れず右手はきっちり和音を押さえてる。管弦楽の多重に交錯した和音を弾くにはどうしても右手で複数押さえるしかないっていう結論になったらしい。
モルダウの流れが急流にさしかかるところの劇的な表現をサラッと通過しつつ(1:23:48~1:23.57)、なんか和音を操作しながら終盤で原曲が長調になるところにうまくワープ。
このラストの長調のモルダウは、川の流れがイントロの源流から平野部を滔々と流れてきて農村とかを眺めながら、激流の難関箇所を経てやがて海の河口にたどりつく、広く開かれた海への流れを明るい曲調で描くクライマックスの場面。自分はここが大好き。そこまでが哀愁を帯びた調べだっただけに。この長調の和音も全部きっちり押さえてる。すごすぎない?なんで全部覚えてるんですか?(n回目)
シビアなラストの右手の高速下降形アルペジオも意地でも入れてくる。すごすぎない……?その執念おそるべし……
吹奏楽曲
ここでそもそも吹奏楽とは何なのかを語っておく。
オーケストラと構成は似てるが成り立ちが違う。オーケストラがバロック時代の宮廷や貴族のサロンの室内楽に端を発するなら、吹奏楽は軍楽隊が発祥だ。だから吹奏楽のルーツである音楽は軍隊の行進時に軍楽ラッパと太鼓隊によって鳴らされた行進曲、つまりマーチだ。現代流行してるコンサートマーチは形式がだいぶ自由になってるけど、単なる軍隊ラッパの旋律から吹奏楽の編成のレパートリーとして育ったのはアメリカで言えばスーザの功績は大きい。今も吹奏楽のトップ楽団はどの国も軍楽隊が大きなウエイトを占めている。
さてござさんのアレンジにおける管弦楽曲は見て来たとおりだが、吹奏楽にもござさんは造詣が深い。たぶん学生時代に吹部でクラリネットにユーフォニウムに指揮(高校の吹部だと生徒が指揮も担当する)、大学ではビッグバンドでキーボードといった様々な編成と楽器を経験してきたから、色んな立場で楽曲の構成を分析できるのだろう。また指揮といった楽団を俯瞰し調整・指導する立場にいたことで、アレンジとかに影響を与えてる気がする。
ウィンドオーケストラのためのムーブメントII「サバンナ」のイントロ(一瞬だけ)
2019/2/25 ピアノ生放送 / Playing piano live streaming - YouTube
このイントロが数ある吹奏楽曲アレンジの中でも一番すごいと思う。一瞬だけど。
現代曲なので和音はどういう仕組みか知りませんけどちょい不協和音気味?の不思議な響きがするのですが、それをまるでそこでスピーカーで鳴ってるんですかっていうふうにサラッと鍵盤で再現されてる。アフリカの鼓動のような左手も一瞬だけどがっつり鳴らされている。
原曲知っててもハイってそこで弾けるってならないでしょ。
ちなみに原曲はアフリカのリズム、JAZZに通じるところがあるかのような?というよりは野生動物の咆哮が聞こえるサバンナの景色を描いてる名作です。
※原曲動画(当該箇所を頭出し済み):
ウィンドオーケストラのためのムーブメントII:サバンナ (Recording at... - YouTube
フェスティバルバリエーション(フルで)
2019/5/27 ピアノ放送 リクエスト受付中! / Piano live 2019/05/27 - YouTube
ちなみにこの回ではたなばたもフル尺で演奏されてるがあえてそこはスルーしてこの曲について語る。
チャット欄でまだ流れが緩やかな頃だが、ホルンパートの所すごーっていう書き込みが非常に多い。そう、この曲はホルンが最高にかっこよく活躍するのだ。そりゃもうリヒャルトシュトラウスの交響詩ばりにかっこいいのだ。
ホルンの響きはアルペンホルンっていうように牧場で鳴らされていた笛が起源、大編成のオケとか吹奏楽でこういうふうに鳴らすと、勇壮な分厚い音圧をもって透明なピンと張った響きになる。その音がござさんのピアノからは聞こえる。なんで?スタッカートではっきりした音飾だから?それだけじゃないと思う。
偶然ピアノの鍵盤が画面に表示されてる回で、弾いてる音が全部見えるので、どういうふうに第三の手が活躍してるのかも含めてよくわかるという意味でも貴重。
とにかくこの回、フルで弾いてくれてて後にも先にもこんなことはもう一生ないだろう。永久保存版。
※原曲動画:Festival Variations - YouTube
スーザのマーチメドレー
2020/5/6:顔出しピアノ リクエスト受付中! / Piano live 2020/05/06 - YouTube
マーチといえばスーザ、スーザと言えばマーチ王。ラデッキー行進曲みたいにウィーン発祥のマーチもあるがそういうロマン派ぽいのではなく、純粋に軍楽隊の音楽から成り立ってるのが吹奏楽のマーチ。色んな作曲家がいるが、スーザが群を抜いて作曲数も多いし有名な曲もたくさんある。
ござさんの配信でこの回ではメドレーにしてくれているが他の配信でもよくスーザのマーチが顔を出してるので、やっぱスーザがお好きなのかもしれない。みんな大好き吹奏楽のマーチ。
さて吹奏楽だから旋律を木管とかトランペットがやってバッキングは中低音ってこと?ってお思いの方いらっしゃいませんかね?吹奏楽曲こそ、そういう竹を割ったような構成じゃないから、これこそ第三の手の出番だと思う。
マーチのBメロと最終盤では木管やトランペットの旋律の裏で中音域(ユーフォニウム、トロンボーンとか、アルトSAXとか)がもうひとつの旋律=対旋律、つまりオブリガードを担当するっていうお約束の展開が必ずある。
マーチとはそういうもの。
旋律とバッキングの他にもうひとつの動き。
これピアノだとどの手で弾くんですか?って話になる。
他にも複雑な構成の曲は多々あるという意味では、ピアノアレンジの困難度では吹奏楽はなんら管弦楽曲と遜色ない(そこで張り合ってどうする?)。
パーカッションも単なるリズムパートだけじゃない(それは管弦楽もだが)、パーカッションだけで旋律を担当する場合だってある。ていうかパーカッションは常に複数居て別々の動きをしてる。そういうのもピアノでどうやって拾うんだ。
というわけで、特に対旋律をなぜかきっちり拾ってるのを初めて聴いたとき、まあ自分はびっくりしたわけで。ござさんの動画を始めてみた時の衝撃と同様に、いやそれ以上になんか雷で頭を撃たれたみたいなショックだった。
それをピアノで弾こうっていう発想がまず信じられない。
そして実際に弾けてる事実ていうのも信じられない。
という訳でござさんアレンジのマーチを聴く時は華麗な超絶技巧に酔いしれるのも結構ですが、
ぜひ。
是非!!
対旋律を探して耳を澄ましてみてほしい。
どうなってるんですか?って思うはず。
そして、対旋律は中音部が奏でるので渋くてかっこいいことが多いです。なんでそこまでシビアに対旋律を拾うのか?ござさんは吹部時代、高校では指揮と共にユーフォニウムつまり中音域の楽器担当だったから対旋律になじみが深いのだろう、と推察する。
※さらに:あまり演奏されない吹奏楽曲だが(あまり知名度ないからな)、この2回の配信ではメドレーでレア曲も沢山演奏されている。必聴です。
2021/7/7 七夕グランドピアノ配信! 2021/07/07 - YouTube
2023/7/9【ピアノ配信】ピアノ弾いてますリクエスト募集中 2023/07/09 - YouTube
※資料:ござさんのチャンネルにある、2分程で吹奏楽曲が色々聞けるメドレー動画
実際の演奏を総覧してみての感想
ござさんは自身の発想を実際にアレンジし、演奏する場としてYoutube生配信を定期的に行われているが、そこではこの記事の冒頭に掲げたとおり自由闊達に様々なジャンルを渡り歩いている。
ござさんの中では音楽に境界線は全く存在しない。
先入観を0にして挑むのは真っ白な道であり、その前途はござさんしか歩めない、ござさんにしか拓けない。
そうした独自の世界とは一線を画して、やはり冒頭で述べた通り、ござさんの世界を見えないところで形作っているのはクラシックをはじめとする様々な音楽の知識と実際の経験だと思う。ピアノ曲?それについてはこんな所で素人が語らずともござさんの演奏をきけば一目瞭然、考察はいらないですよね。
クラシック自体が他分野との境界があいまいだし、ござさんの内包する世界はそれだけではない。
しかしそういう音楽っていう固定の分類に囚われず、
ござさんは音楽という存在に対して、
あらゆる音楽に距離感を等しく於いて接し、
敬意を払い、
音楽から教えを乞う姿勢を崩さず謙虚に、
そして真摯に向き合う姿勢が感じられる。
ござさんのピアノの演奏を聴けば、全てを物語ってくれる。